NiziUとTWICE、そしてIZ*ONE

虹プロにはそれほど興味は無かったのだが、NiziUとしてのプレデビューがこれだけ話題になるとグループに対する関心はやはり高くなってくる。
すでに日本では非常に大きな反響を巻き起こしている。

WIZ*ONEとしては辛いがNiziUの日本での勢いはすでにIZ*ONEを凌ぐものがあると思う。

 

虹プロがこれほどの反響を生んだ要因としては、まずはやはり地上波を巻き込んで展開できたことが大きいだろう。
IZONEを生んだPRODUCE48は日本でも視聴はできたけど、当然地上波に比べれば限られた人しか見ていなかった。日本においてはまだまだ地上波の力は強い。

PRODUCE48と虹プロを比べると緻密な編集、重層的な人間ドラマ、息を呑む展開など
オーデション番組に不可欠な番組のクオリティーとしては、PRODUCE48に軍配が上がると思う。

しかしパク・ジニョンという圧倒的なカリスマの存在によってすべてを一点突破してしまうようなパワーが虹プロにはあった。
そしてPRODUCE48にはパク・ジニョンがいなかった。パク・ジニョンのような存在がいなかったからこそあのような悲劇が生まれてしまったともいえる。

IZONEの活動を追うにつけ、多額の予算を使いあれほど大きな展開をしていくアイドルグループを素人が選んじゃそりゃうまくいかんだろうなとは思う。
こんなことを言ってしまっては身も蓋もないが。

IZONEのメンバー選出の「圧倒的な正しさ」と、選考した人間たちに実刑判決が下されているという事実を考えると複雑な感情にならざるを得ない。

 

NiziUのミニアルバムの4曲を聴いてみて、思いのほかK-POP色があるなと感じた。
先輩のTWICEの日本での楽曲はわりと普通のJ-POPで、K-POPのテイストは意識的に除かれている印象があったので、NiziUも日本ではそういう売り出し方でくるのかと思っていた。


NiziUの楽曲を聴きMVを観るだけで、若い女性たちに対する商品性が非常に高いことはすぐに分かる。

古家正亨の韓流ぴあでの連載で、JYPの代表であるパク・ジニョンがエンタメの仕掛人として最も大事にしていることはマーケティングだと語っていると書かれていた。
これはTWICEの活動を追っているだけでもよく理解できる話だ。

韓国でのデビュー以降キャッチーでK-POPらしい中毒性の強い楽曲でトップアイドルに上り詰め、その中でも最も売れた「TT」で日本での活動をスタートし一気に人気を獲得するもののその後日本でリリースされる楽曲に関してはJ-POP色の強い楽曲にシフトされていった。

韓国での活動が好きなファンからは必ずしも好評を得ているわけではないものの、もし日本でも韓国と同じような楽曲をリリースし続けていったらTWICEが日本でこれほど
広く受け入れられることはなかっただろう。

 

K-POPのガールズグループの日本での活動の先駆者である少女時代が「GENIE」「Gee」といった韓国でも大ヒットした楽曲で日本でも大ブレイクし、日本でのデビューアルバムではミリオン超えをして旋風を巻き起こしたものの、その後日本でのオリジナル曲では思うようなヒットにならず失速していった。(2012年に発生した日韓問題の影響も大きいだろうが。)

それを考えれば、日本でのデビューから3年経ってもドームツアーや東京ドーム2DAYSを行えるTWICEは、少女時代を遥かに超えるような巨大で強固なファンダムを日本で形成している、ということができるだろう。

楽曲だけではなく、セールスプロモーションに関しても日本の市場を緻密に計算して行われており、これは当然パク・ジニョンだけの功績ではなく他にも優れたブレーン達がいるのだろうが、パク・ジニョンの中に日本での活動に関してこうした努力が必要であるという判断があることは間違いない。

 

一方のIZONEの日本での総合プロデューサーは言わずとしれた秋元康である。
秋元康マーケティング的な発想を拒否することを公言してやまない。

AKBは良くも悪くも秋元康の思いつきでグループ運営が進められてきて、その結果としてあそこまで巨大なグループになっていったものの近年ではその弊害の方が大きくなっているように思う。

もう一方の坂道シリーズは現状若い女性たちからも支持を得られているものの、これは村松俊亮を中心にしたソニー・ミュージックのクリエイティブの力が大きいだろう。
ソニー・ミュージックはYUI西野カナなど00年代からふわっとした可愛らしいビジュアルイメージ等若い女性からも支持を得られるフォーマットを確立している。
坂道シリーズの全体的なコンセプトにに秋元康のセンスが強く反映されているとは思えない。


IZONEは日本デビューのころから「若い女性たちから抜群の人気」というのを売り文句にしてきて実際高い人気を得てきたものの、日本でリリースしてきた楽曲に関しては若い女性たちを熱狂させることはできていない。

IZONEの日本での活動においては若い女性から強く支持されるグループを目指すというコンセプトは決まっていたのだろうが、問題は秋元康AKS(現ヴァーナロッサム)には若い女性から支持されるコンテンツをクリエイトする能力が無いということだ。

日本でのデビュー曲となった「好きと言わせたい」は発売前にCDTV年越しライブで初披露されたが、その時ツイッター上では失望の声が多数上がっていた。韓国でのデビュー曲「La Vie en Rose」と比べたときのクオリティーの差は歴然としていた。

とはいえその後に日本でリリースされた楽曲を考えると、AKBの楽曲にもありそうな王道の秋元ソングという感じの「好きと言わせたい」はまだマシだった。

2ndシングル「Buenos Aires 」は若い女性に受けそうなオシャレな仕上がりを目指したのだろうが逆に無残な事になっていた。

3rdシングル「Vampire」はAKBでもしばしば試みられるモロに往年の歌謡曲を意識した楽曲であったが、迷走してる感は否めなかった。
またCDのジャケット写真や歌番組での衣装のダサさなども疑問の声があがることが多かった。
(批判的なことを書き連ねてきたが、個人的にはTWICEの日本楽曲よりIZONEの秋元楽曲の方が好みではあるのだがそれに関してはまた今度書いてみたい)


とはいえIZONEは日本でのデビュー直後から主要な歌番組にはほとんど出演することができていたし、「深イイ話」で特集されたり「しゃべくり007」のような人気番組にも出演でき、普通の新人グループであればこんな待遇はありえないことで、これは秋元グループとしての利点だろう。メンバーも色んな番組で高いバラエティ対応能力を発揮していた。

またリリイベに関してはコスパが良いということで評判も良いようで、このあたりはAKSが力を発揮できる分野なのであろう。

不正問題とコロナウイルスによって日本での活動が難しくなったことによって、期待をむしろ高めていることは皮肉だが、そろそろ日本でも何らかのアクションを起こす必要があるだろう。

IZ*ONEに残された時間はもうそれほど多くはない。